下肢の後遺障害について
下肢の後遺障害の症状
下肢の後遺障害は骨折や脱臼、神経損傷などによって引き起こされます。
下肢の後遺障害の主な症状は、歩けなくなる、足の可動域が制限される、骨癒合の不良などです。膝関節や股関節の障害もこれに含まれます。
下肢の後遺障害の認定基準
下肢の後遺障害の認定基準は以下の通りになります。
欠損障害
等級 | 認定基準 |
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失ったもの |
4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
5級5号 | 1下肢を足関節以上で失ったもの |
7級8号 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
ワンポイント解説
「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、股関節において①股関節において寛骨と大腿骨を離断したもの、②股関節とひざ関節との間(大腿部)において切断したもの、③ひざ関節において、大腿骨と脛骨とを離断したものをいいます。両下肢なら1級、1下肢なら4級になります。
「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、①ひざ関節と足関節の間(下腿部)において切断したもの、②足関節において、脛骨及び距骨とを離断したものをいいます。両下肢なら2級、1下肢なら5級になります。
「リスフラン関節以上で失ったもの」とは、①足根骨において切断したもの、②中足骨と足根骨とを離断したものをいいます。両下肢なら4級、1下肢なら7級になります。
機能障害
等級 |
認定基準 |
1級4号 |
両下肢の用を全廃したもの |
5級5号 |
1下肢の用を全廃したもの |
6級7号 |
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級10号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
ワンポイント解説
「下肢の用を全廃したもの」とは、股関節、膝関節、足関節のすべてが完全強直したものをいいます。両下肢なら1級、1下肢なら5級が認定されます。
「関節の用を廃したもの」とは、①関節が強直したもの(健側の可動域の10%程度以下に制限されたもの) 、②関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもののほか、③人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものをいいます。
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、①関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているもの、②人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節が健側の可動域の1/2を超えるものをいいます。
「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されるものをいいます。
変形障害
等級 |
認定基準 |
7級10号 |
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 |
1下肢に偽関節を残すもの |
12級8号 |
長管骨に変形を残すもの |
ワンポイント解説
「偽関節」とは、骨折部の骨癒合機転が完全に停止し、異常可動を示すものをいいます。
7級及び8級はいずれも「偽関節」が問題になりますが、7級の場合には「著しい運動障害を残すもの」が必要であるため、骨の癒合不全に加え、常に補装具が必要となる程度の運動障害が必要な点が8級の場合との違いです。
「長管骨」とは、大腿骨、脛骨などを指し、「変形を残すもの」とは、おおよそ6種類程度に分かれ、例えば骨の変形、骨端部の癒合不全、骨幹端部の癒合不全、骨端部の(ほぼ)欠損、骨の直径減少、大腿骨の変形癒合等のことを指します。
短縮障害
等級 |
認定基準 |
8級5号 |
1下肢を5㎝以上短縮したもの |
10級8号 |
1下肢を3㎝以上短縮したもの |
13級8号 |
1下肢を1㎝以上短縮したもの |
ワンポイント解説
交通事故外傷ないし治療の過程で下肢が短縮した場合、短縮した長さによって等級認定がなされることになります。
短縮したかどうかの立証方法としては、ロールレントゲンフィルムの提出やレントゲン撮影の際にメジャーを当てて計測して健側との比較を行うなどが一例です。
下肢の後遺障害の留意点
下肢の後遺障害認定においても、上肢の場合と同様に、最も気をつけなければならないのは、可動域の測定です。
可動域の測定が5度違うだけで、後遺障害が認定されるか、該当するとしてその等級が大きく変わってしまうことがあります。ところが、可動域の測定は、測り方によって大きく変わるため、慣れていない医師が行うと、大きく間違えた値が出てしまうことがあるので、注意が必要です。
適正な後遺障害等級の認定を得るためには、個別に適切な対応方法を取る必要がありますので、お困りのことやご不安がありましたら、お気軽に当事務所までご相談下さい。
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