むち打ち(鞭打ち)について
むち打ちの症状
「むち打ち」は、自動車の追突事故などの反動で首がむちのように前後左右に揺さぶられることが原因で起こる症状ですが、正式な名称ではありません。
正式には、頚椎捻挫(けいついねんざ)、頚部挫傷(けいぶざしょう)、外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)、バレ・リユウー症候群などと診断されます。
典型的な症状は首の痛み、肩こり、腕や手指の痺れ、などです。
むち打ち症の等級認定について
むち打ちは、後遺障害として認められないと思い込まれている方もおられるのですが、実際には、むち打ちでも後遺障害が認められることはありますし、実は、全部の後遺障害認定の中で最も多く、半分以上を占めているのは、むち打ちのケースなのです。
但し、むち打ちであれば、必ず後遺障害が認められる訳ではなく、下記の表が認定の基準となります。
むちうち症の等級認定について
等級 |
労働能力喪失率 |
労働能力喪失期間 |
認定基準 |
12級13号 |
14% |
5~10年 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 |
5% |
5年以下 |
局部に神経症状を残すもの |
「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、痛み・しびれ等の神経系統の障害が、医学的(他覚的)に「証明可能」なものを指します。
「局部に神経症状を残すもの」とは痛み・しびれ等の神経系統の障害が医学的に「説明可能(推定できる)」なものを指します。
12級と14級の分かれ目は、他覚的所見の有無と整合性に尽きます。通常、むち打ちの場合には器質的損傷を伴わないため、レントゲン等では判別がつかないという点に注意が必要であり、ヘルニア等の確認にはMRI撮影は必須です。
12級の認定のポイント
①事故直後から左右いずれかの上肢、肩、手指に強烈なしびれが発生し、多少改善するも基本的にはそのまま症状固定に至ったこと(自覚症状の強度性及び一貫性)
②MRIでC4/5、5/6、6/7のいずれかにヘルニア所見(椎間板突出)が認められること(画像所見)※明確に画像所見がない場合には、針筋電図検査の結果で左右に有意な差があることでも代用できる場合あり。
③スパーリングテスト、ジャクソンテスト(頚椎椎間孔圧迫追試験)で陽性反応が出ていること(神経学的所見)
④深部腱反射で低下ないし消失所見が得られていること(神経学的所見)
⑤上腕ないし前腕に筋萎縮が認められること(神経学的所見)
14級の認定のポイント
①事故直後から左右いずれかの上肢、肩、手指にしびれ、重さ、だるさ感が発生し、多少改善するも基本的にはそのまま症状固定に至ったこと(自覚症状の一貫性)
②MRIでC4/5、5/6、6/7のいずれかに少なくとも変性ないし膨隆所見が認められること(画像所見)
③スパーリングテスト、ジャクソンテストで陽性反応が出ていること(神経学的所見)
④深部腱反射で低下ないし消失所見が得られていること(神経学的所見)
⑤上腕ないし前腕に筋萎縮が認められること(神経学的所見)
※④ないし⑤はあればなおよいというレベルです。
むち打ちの場合の留意点
上記のように、むち打ち症は、申請件数も多く後遺障害の中で最も多いケースですが、逆に言うと、申請件数全体に占める認められないケースも最も多いのです。後遺障害がきちんと認定されるかどうかで、損害賠償額が数百万円以上異なる場合もありますので、適切な診断を受けることが極めて重要です。
医師の仕事はあくまで治療をすることであるため、それ以上に後遺障害等級認定を見据えた検査の実施や診断書を的確に書いてもらえるかどうかは、医師の個人差がありますので、ある程度被害者の方から積極的に検査をお願いするなどの対応をとる必要があります。
当事務所にご依頼することで後遺障害を見据えてどのように動くかどうかについても含めてアドバイスができますので、お困りのことやご不安がありましたら、お気軽にご相談ください。
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