死亡事故の逸失利益
「死亡事故について」で概要については説明いたしましたが、死亡事故の逸失利益についてはよく問題となる項目ですので、少し詳しくご説明いたします。
問題となるケースとして、以下のようなものがあります。
被害者の年齢・職業による算出方法の区別
①収入を証明できる場合
原則、交通事故前年度の収入(税込み)を基礎収入とする。
ただし、おおむね30歳未満の若年労働者の場合には、賃金センサスの全年齢平均賃金に基づいた額を基礎収入とする。
②収入を証明できない人(求職者など)
就労の蓋然性がある場合には、賃金センサスの男女別平均賃金に基づいた額を基礎収入とする。
③就労可能年数
就労可能年数は、原則として、67歳までを就労可能年数としていますが、開業医等の専門職については67歳よりも長い年齢までとされる場合もあります。
また、およそ55歳以上の場合については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長期の方を使用します。
若年の未就労者の場合
死亡逸失利益の算定方法
逸失利益=年収×(1-生活控除率)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数-就労可能年数(通常18歳)までの年数に対応する機関のライプニッツ係数)
若年の未就労者(幼児、18歳未満の学生等)については、就労可能年数までの期間分すべてを逸失利益と認めると、通常働かないであろう学生の期間についても含めて収入が発生することになり、不公平になりますので通常18歳までの期間を控除する形で算定します。
また、若年の未就労者については、実際に働いていない以上いくら稼げるかはわかりませんので、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金に基づいた額を年収(基礎収入)として算定します。
年金の逸失利益性
年金については、性質に応じて様々な種類がありますが、その中で老齢年金や退職時年金等の老後の生活保障的な色彩が強いものについては、逸失利益性が認められています。
他方,遺族支給年金のように、被害者固有の権利であるものについては、逸失利益性は否定されています。
年金について逸失利益性が認められる場合、その対象期間としては、被害者の死亡時の年齢からみた平均余命までの期間です。
年金の逸失利益における生活費控除率は、一般に一家の支柱であれば40%,女性であれば30%と、男性であれば50%となりますが,年金については,ほとんど生活費に費消されるものと推認されるため、上記の場合よりも比較的高くなる傾向にあり,50%ないしそれ以上となることもあり得る点に注意が必要です。
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